はじめに
2026年6月28日 (日) に、令和8年度弁理士試験の論文式試験 (以下、論文式試験)が行われました。5月に行われた短答式試験に続く第2関門の試験です。内容は、特許・実用新案法 (第1問、第2問で120分) 、意匠法 (90分) 、商標法 (90分) の計5時間、休憩時間を含めて全体で7時間以上に渡る長丁場の試験です。
論文式試験は、短答式試験に合格した人の中から約25%が合格する試験です。短答式試験を突破した人同士の争いとなるため、弁理士試験の中でも一番の山場となります。
このため、各法律 (関連する条約を含む) の総合的な理解力が問われます。時間も非常にタイトになるため、素早く答えを見つけてミスなく答案を書くことが求められます。
筆者も過去に論文式試験を受験しましたが、夕方に最後の科目である商標法の試験が終了した時点で力を使い果たし、しばらく立ち上がれないほどでした。
今回は、令和8年度の論文式試験の問題を解いてみた感想と考察を書いていきます。なお、以下は筆者が問題を検討した上での個人的な感想・考察であり、正式な出題趣旨や模範解答を示すものではありません。
今年の短答式試験については、こちらのブログ「令和8年度 弁理士試験 短答式試験 前夜」「弁理士短答式試験をAIと解いて感じたこと ― 問われるのは人間の判断力」でも扱っています。
全体的な感想
今回は、各科目ともに、基本的な内容でありながら、これまで正面から問われることが少なかった論点が多く見受けられました。
まず、特許・実用新案法については、「拒絶査定不服審判の前置審査での補正却下」や「パリ4条Cの正規の特許出願」、「拒絶査定不服審判の審決却下」が挙げられます。
意匠法については、全体的に細かく広い範囲から問われており、答案をどこまで書くか、どのように絞るかが悩ましかったのではないかと思いました。論点としては、「動的意匠の出願手続」、「組物の意匠の出願手続」、「混同を生ずるおそれのある意匠の扱い」、「国際出願の出願日」、「共有の意匠権に対する質権」、「試験研究目的」など、細かい論点が盛りだくさんであった印象です。
商標法については、問題Ⅰで「防護標章制度の趣旨」が問われていましたが、「権利者以外の者や需要者にとってのメリット」にも触れる必要があるなど、法目的と絡めた制度趣旨が問われていた印象です。後半の事例問題も、「不使用取消審判における駆け込み使用に該当するか否かの判断」、「周知性の判断」、「権利濫用にあたるかの判断」など、判例や条文をベースとしつつも、現場での対応力を問うている印象を受けました。
全体的な考察
今回は、「各法域の制度の内容を真から理解しているか」、「現場で事例に当てはめて理由を付けて判断できるか」、「手続を条文に沿って正確に答えられるか」、という点が重点的に問われている印象でした。
これらは、条文や趣旨、判例などを暗記したり、ただ過去問等で練習したりするだけでは十分に対応するのが難しいと考えられます。制度の趣旨について、各法律の目的に結び付けて、「なぜ、どういう目的でこの制度を設けたのか」、ということを現場で導き出せることが求められていたと考えられます。
また、手続については、貸与される法文集を参照して、条文に沿って漏れなく簡潔かつ正確に書けることが求められている印象でした。特に、「出願するための留意点」や「審判でどう扱われるか」などという問いがそれに該当します。
結び
知的財産の専門家である弁理士として、制度や法律の正確な理解が広く問われています。条文や趣旨、判例などを暗記するだけでなく、真から理解することが求められていることでもあります。
常に、法目的を意識して、「なぜこの制度が存在するのか」、「どういう経緯でこの制度が設けられたのか」、「何が問題点なのか」、「裁判ではどうしてこのような判断がされたのか」、などといったことを考えられると良いと思いました。
La Bussola IP Office では、特許制度をはじめとした知的財産の歴史について、今後ブログで連載していく予定です。歴史を通して、各制度がどのような背景や理由から生まれたのかを追っていければ幸いです。
また、今回の試験の個別の問題については順次公開したいと思います。
(特許・実用新案法問題I、特許・実用新案法問題II、意匠法、商標法)
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