はじめに
2026年8月に入り、今年度の弁理士試験も短答式試験、論文式試験が終了し、現在は論文式試験の合格発表を待つ時期となりました。
論文式試験に合格すると、いよいよ最後に待っているのが口述試験です。令和8年度(2026年度)の口述試験は、10月17日(土)から19日(月)までのうち、いずれかの日に実施される予定です。
弁理士試験の最終関門である口述試験とは、どのような試験なのでしょうか。今回は、試験制度の概要と、筆者自身の受験経験をもとに、口述試験当日の流れを紹介します。
口述試験とは
弁理士試験の口述試験は、例年、10月中旬から下旬の土・日・月曜日にかけて行われる面接形式の試験です。合格率は90%超とされていますが、油断は禁物です。
科目は論文式試験 (必須科目) と同様に、特許・実用新案、意匠、商標、の3科目となります。各科目の試験時間は10分程度で、一つのテーマについて試験官から次々と質問を受け、口頭で回答していきます。筆記試験のように、難しい問題をいったん飛ばして後から戻るという進め方はできません。
試験は、東京都内のホテルが会場となります。例年は東京・芝公園のザ・プリンスパークタワー東京というホテルが会場となります。東京タワーが目の前に見える立地で、最寄り駅は都営大江戸線の赤羽橋駅と、都営三田線の芝公園駅になります。
なお、アイキャッチ画像も、口述試験会場のホテルの前で撮った写真です。
試験は、各教科A, B, Cの3段階で評価され、C判定が2教科以上出なければ合格するという基準です。
口述試験の流れ
以下は、筆者が口述試験を受験した当時の体験に基づくものです。会場内の運営方法や人数等は年度によって異なる可能性があります。
論文式試験に合格すると、後日、口述試験の日時などが記載された受験票が届きます。
試験当日に会場に入ると、試験の受付をして、「レーン」と呼ばれる8つほどのグループに分かれて案内されます。その後は、係員の誘導に従って控室に行き、順番が来ると呼ばれて、試験室に案内されます。
控室も試験室も、どちらもスイートルームの家具を取り払った広い一室です。控室は、同じレーンの10人ほどが並べられた椅子に座って順番を待ちます。試験前なので受験者は真剣で私語ももちろんありません。情報漏洩防止の観点から、部屋の厚いカーテンも閉じていて適度に暗く適度に重々しい空気となります。控室では、口述対策の資料を読むのか、精神統一をするのが良いでしょう。
自分の順番が来ると、係員に呼ばれ、誘導に従って特許・実用新案の試験会場の部屋へと移動します。荷物を持って移動します。そして、部屋の前の椅子に座って待機します。
会場のホテルは真ん中が吹き抜けになっていて、吹き抜けに面して廊下があるため、廊下からは各階の通路が見えます。各階の通路では、こちらと同じように係員に誘導されて移動する受験生があちこちに見えます。
試験は流れ作業的に行われており、前の受験者の試験が終わって試験官の準備ができると、いよいよ会場に入室です。係員がドアを開けて誘導に従って入室します。
会場の部屋まではクローゼットなどのある長い通路を抜けていきます。この通路が微妙な緊張感を誘います。はたまた、RPGのラストダンジョンのような気にもなりました。
奥まで行くと、テーブルをはさんで対面する形で試験官が控えています。試験官は2名です。テーブルにはメモ用紙とペン1本と法文集が備え付けてあります。
問題によっては「パネル」と呼ばれる、問題の設定や図が記載してある、A4サイズ程度のラミネート加工された紙が1、2枚、伏せて置かれている場合があります。
まず、こちらから名前を名乗り、試験官の合図を待って着席すると、試験が始まります。
パネルがある場合は、試験官の指示に従ってパネルをめくり、その内容を参照しながら質問に答えます。問題が示されたカードを見ながら試験官の質問に答えるという点では、英検の二次試験(面接形式の試験)に少し似ているかもしれません。
試験のポイントとしては、少し深呼吸をして、ゆっくりと腹から声を出す感じで話すと良いでしょう。相手に聴き取りやすく話せるのが大事だと思います。法文集はなるべく見ずに進められればベストです。時間が命になるので、問答をスムーズに進められるのが理想的です。
しかし、難しい問題が出てしまったり、答えに窮してしまったりした場合は、試験委員の許可を受けて法文集を参照することもできます。ただし、法文集を引いている間も試験時間は進むため、条文を探すこと自体に時間を使いすぎないことも重要です。
また、答えが出なくても、沈黙をしていると時間が経過してしまうので、できれば間違っていても何かしら答えた方が良いと思います。ヒントが得られる可能性があります。試験は対話なので、試験官とやり取りしながら答えに進めることもできます。
完全に自信がなくても、分かる範囲で考えを口にすることで、試験官から問い直しやヒントが与えられ、正解にたどり着ける場合もあります。
8分ほど経過すると、チャイムが1回鳴ります。そして、10分ほど経過すると、またチャイムが鳴ります。チャイムは、係員の人が外で時間を計って手動で鳴らしていました。
もし、試験がスムーズに進んで早めに答えきってしまった場合は、試験の採点とは関係のない問答になります。俗に「雑談」と呼ばれることもあります。受験生の間では、ここまで進めばその科目は順調に終わったと受け止められることもありますが、もちろん採点結果が保証されるものではありません。この問答では、「なぜ弁理士を目指したか?」「論文試験はどんな印象でしたか?」という内容でした。
このような要領で、意匠、商標の試験を受けます。商標の試験の後は、係員の誘導に従って試験終了後の控室に移動します。ここも、同じレーンの受験者がそろって、許可が出るまで部屋で待機をします。
試験前であれば、試験の資料を見るなどしたのですが、試験終了後はただ待っている形になりました。中には、文庫本などを読んでいる受験者もいたので、何か本を持っていた方が良いかもしれません。
同じ時間帯の試験が終わると、係員の指示に従って解散となります。帰りは芝公園や増上寺前などを散歩して、都営三田線の御成門駅から地下鉄に乗って帰りました。
結び
今回は、口述試験の全体像と、筆者の実体験をもとに口述試験の流れを見ていきました。対面の10分勝負は独特の緊張感があります。できるならば、予備校などが催している口述模試で練習するのも良いと思います。筆者は東京まで遠いのもあって口述模試は受けませんでしたが、模試の中で口述試験の情報なども聞けるかもしれません。
口述試験の会場は、まさにRPGのラストダンジョンといった感じでした。受験生も試験官も係員もお互いに緊張している感じがします。深呼吸して落ち着いて試験に臨めると良いでしょう。
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