2026年短答式試験のデータを分析する ― 合格点39点とはどのようなレベルなのか

R_Univ 弁理士コラム

はじめに

 2026年 (令和8年) 5月17日の日曜日に弁理士試験の第一関門である短答式試験が行われました。そして、約3週間後の6月8日月曜日に短答式試験の合格発表がありました。同時に、特許庁から、受験者数、得点分布、合格数などのデータも公表されました。

 合格点は例年通りの39点で、合格者数は 436人 (短答一部免除者・工業所有権法免除者を含めると 459人) となりました。合格率は16.5% とされており、昨年の 12.8% よりもやや上がっています。

 今回は、短答式試験について公表されたデータから、更に統計的に分析をしていきます。

 なお、短答式試験など弁理士試験の概要は、こちらの記事もご参考にして頂ければ幸いです。また、令和8年度の短答式試験のうちの何問かをAIと解いた感想も、こちらの記事に記載しておりますので、ご参考になれば幸いです。

受験者数と合格率

 令和8年度の短答式試験は、特許庁の公表データによると、志願者数3,528人、受験者数 (短答一部免除者・工業所有権法免除者含む) 2,786人、合格者数 (短答一部免除者・工業所有権法免除者含む) 459人でした。この受験者数2,786人と合格者数459人で求めた合格率が16.5%となり、公表されている合格率と一致します。

 ここで、短答一部免除・工業所有権法免除 (以下、短答一部免除) なしの人数で見た場合はどうなるのでしょうか。本稿では、以下、短答一部免除なしで合格率等の統計データを計算することとします。

 短答一部免除なしでは、受験者数2,746人、合格者数436人となります。したがって、合格率を求めると15.9%となり、公表データよりやや下がりました。

平均点、中央値、最頻値

 公表されている得点分布から平均点、中央値、最頻値を求めます。平均点は28.5点、最頻値は21点、中央値は28点となりました。平均点と中央値はほぼ同じであったものの、最頻値は21点と7点程度低い値となりました。

 なお、中央値は、受験者が2,746人のため、真ん中の順位である1,373番と1,374番の人の点数の平均となりますが、どちらも28点に所在していました。

 最頻値は、最も人数の多い点数となりますが、21点に118人分布していることから、21点が最頻値となりました。

 分布を求めると、21点、28点、34点、37点にピークがある分布で、平均より低い点数に分布が偏りつつも全体として二つの山を持ち、その中にいくつかの局所的なピークが見られるグラフとなります。「令和8年度短答式試験の得点分布」を図1に示します。

図1 令和8年度短答式試験の得点分布

分散、標準偏差

 データの散らばり具合を見るために、分散と標準偏差を求めます。

 分散は、偏差 (各人の点数と平均点との差) を2乗した値の平均値で求められます。この分散の平方根をとると、標準偏差が求まります。

 標準偏差は、各受験者の得点が平均点からどの程度離れているかという、得点のばらつきの大きさを表す指標です。値が大きいほど得点のばらつきが大きく、値が小さいほど平均点付近に得点が集まっていることを意味します。

 以上の計算の結果から、分散は 83.0、標準偏差は 9.1 と出ました。

 この結果から、分布が正規分布に近い場合には、平均点±標準偏差にあたる19.4点~37.6点付近に、全体のおよそ3分の2が含まれることになります。ただし、今回の得点分布は正規分布とはかなり異なる形をしているため、この割合はあくまで目安です。

偏差値

 ここで、短答式試験の合格点である39点とはどのような値なのでしょうか? 単純に見ると、60点満点の65%に相当します。すなわち、約2/3に相当する問題を正解する必要があることになります。

 では、この39点を偏差値で評価するとどうなるのでしょうか。偏差値とは、平均を50、標準偏差を10と換算した値になります。具体的には、平均点より標準偏差の分だけ点数が高いと偏差値60、平均点より標準偏差の分だけ点数が低いと偏差値40に相当します。

 39点について今回の条件で偏差値を求めると、61.5となりました。これは平均点より標準偏差の約1.15倍だけ高い位置に相当します。「今回の短答式試験の得点分布を偏差値に換算したもの」を図2に示します。

図2 令和8年度短答式試験の得点分布を偏差値に換算した値

 なお、得点分布が正規分布に従うと仮定すると、偏差値61.5は上位約12~13%に相当します。ただし、今回の実際の得点分布は正規分布とはかなり異なるため、この割合はあくまで理論上の目安となります。参考図として、「正規分布を仮定した場合の偏差値と上位割合」を図3に示します。

図3 正規分布を仮定した場合の偏差値と上位割合 (参考)

結び

 今回は、2026年の短答式試験のデータを、様々な角度から分析してみました。分布をみると、21点、28点、34点、37点にピークが見られました。

 最頻値が21点で、合格点39点との間に18点もの差があることからも、多くの受験者にとって合格点に到達することが容易ではない試験であることがうかがえます。

 28点付近は、総得点としてみれば各法域の基礎事項をある程度押さえた層が形成している可能性があります。ただし、総得点だけから各科目の足切りを回避していたかどうかまでは判断できません。

 34点と37点のピークは、得点上は合格点に近い層と考えられます。合格点に達するには、もう一段壁を乗り越えるか、ミスをなくすか、といった対策が考えられます。特に、特実に多くみられる個数問題 (「正しいものはいくつあるか」のような問題) を何問か確実に解けるようにしつつ、条文の細かい点まで把握することが対応策と考えられます。

 なお、筆者が初めて短答式試験を受けた年度は、知財の知識ゼロの状態から勉強期間3カ月で、独学で、基本的なルールを過去問でたたきこんで臨みました。各教科の足切り点はギリギリで回避できたものの30点で不合格となりました。筆者自身の経験からは、各法域の基本的な内容を押さえることが、まず科目別の足切りを回避するための一つの目安になると感じました。

 筆者自身は、30点台からさらに合格点を目指す段階では、条文をより正確に理解し、知識の精度を高める必要があると感じました。その後、予備校に1年通って短答突破を目標に学習した結果、40点で合格できました。特許・実用新案 (特実) の個数問題に苦しめられ、特実では10点しか取れませんでしたが、意匠・商標・不著(著作権法・不正競争防止法)で盛り返すことができました。

 弁理士試験の第一関門である短答式試験は、大きな壁であるに違いありません。しかし、短答式試験を突破できるほどの法律知識を身につけることは、論文式・口述式試験に進むうえでの重要な基礎になると思います。

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