はじめに
弁理士試験では、第2関門の論文式試験 (必須科目) と最終関門の口述式試験で法文集を参照することができます。
法文集は、論文式試験の際に各受験生に配布され、試験終了後には持ち帰ることができます。筆者はこれを試験の「参加賞」または「戦利品」と呼んでいます。そして、今も法文集は大切に本棚に収納しております。
一方、口述式試験では、各試験室に法文集が用意されており、試験中に試験官の許可を得て参照することができます。
論文式試験も口述式試験も時間的にタイトな試験なため、素早く法文集を参照することが求められます。このため、調べる条文と、その条文がどこにあるかをある程度把握しておいた方が良いと思われます。
今回は、弁理士試験の法文集について、実際に法文集がどのようなものなのかを見ていきます。
法文集の概観

図1 法文集の概観・サイズ
法文集は、縦210mm、横148mmのA5サイズで、厚さはしっかりと閉じた状態で約40mmとなっています。重さは約1kg なので、500mL のペットボトル飲料2本分に相当します。実際持ってみると意外と重くて大きい印象を受けます。
法文集のページ数は、法改正などによって収録される条文の量が変動しますが、だいたい1650ページ程度になります。
表紙は厚紙であるものの、市販の法文集のようにしっかりと製本してあるわけではないため、すぐに折れ曲がったりシワができたりしてしまいます。このため、市販の法文集と比べると、製本はやや簡素な印象を受けます。
表紙の色は薄めのパステルカラーのような色で、年度ごとに異なります。例えば、令和元年は薄いピンク色、令和2年は薄いオレンジ色でした。その他、薄いグリーンや薄いブルーの年度もあります。令和8年度はアイボリーのような色でした。
法文集に納められている法令・条約
法文集には、知財4法や関連する条約の他、民法や民事訴訟法なども収録されています。詳細は、特許庁のサイトに記載されています。
具体的には、以下の順番で法文が記載されています。なお、法文集の最初に目次もあります。
条約の正式名称は非常に長いため、「パリ条約」のように通称で表記します。
以下の割合は、筆者所有の法文集についてページ数を基に概算したものです。年度や法改正によって変動します。
特許に関する法令 (全体の17~18%程度のボリューム)
- 特許法
- 特許法施行令
- 特許法施行規則
- 特許登録令 特許登録令施行規則
実用新案に関する法令 (全体の4~5%程度のボリューム)
- 実用新案法
- 実用新案法施行令
- 実用新案法施行規則
- 実用新案登録令
- 実用新案登録令施行規則
意匠に関する法令 (全体の8%程度のボリューム)
- 意匠法
- 意匠法施行令
- 意匠法施行規則
- 意匠登録令
- 意匠登録令施行規則
商標に関する法令 (全体の10~11%程度のボリューム)
- 商標法
- 商標法施行令
- 商標法施行規則
- 商標登録令
- 商標登録令施行規則
特例に関する法令 (全体の6~7%程度のボリューム)
- 工業所有権に関する手続等の特例に関する法律
- 工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行令
- 工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則
特許協力条約に関する法令 (全体の6%程度のボリューム) ※ 通称で記載
- 特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律(いわゆる「国願法」)
- 国願法施行令
- 国願法施行規則
工業所有権等に関する条約 (全体の22~23%程度のボリューム) ※ 通称で記載
- パリ条約
- PCT
- PCT規則
- 特許法条約
- ブタペスト条約
- マドリッド協定
- マドリッド協定のストックホルム追加協定
- 世界知的所有権機関を設立する条約
- 国際特許分類に関するストラスブール協定
- ニース協定
- TRIPS協定
- 商標法条約
- 商標法条約に基づく規則
- シンガポール条約
- マドリッド協定議定書
- ジュネーブ改正協定
民法編 (全体の8~9%程度のボリューム)
- 民法
- 仮登記担保契約に関する法律
- 製造物責任法
民事訴訟法編 (全体の15%程度のボリューム)
- 民事訴訟法
- 民事訴訟規則
- 民事執行法
- 民事保全法 破産法
不正競争防止法編 (全体の1%程度のボリューム)
- 不正競争防止法
- 不正競争防止法第23条第1項に規定する事件に係る刑事訴訟手続の特例に関する規則
収録されている法令・条約の割合を図で示すと、下記の通りとなります。

図2 法令・条約の収録割合 (円グラフ)

図3 法令・条約の収録割合 (積み上げグラフ)
その他
筆者が受験した際には、法文集は論文式試験の各科目の試験終了後に一旦回収され、次の科目で再び配布される運用でした。このため、休憩時間中に法文集を読むことはできませんでした。
また、法文集への書き込みやページの折り曲げは禁止されています。試験問題冊子についても、ページを切り離すことは禁止されています。このため、問題用紙の一部をしおり代わりに使うこともできません。
筆者が受験した令和2年度は、感染症対策の一環として、法文集に受験番号を示すシールを貼り、各科目で同じ法文集が戻ってくる運用となっていました。
実際に法文集を使って感じたこと
筆者は、最初に論文式試験を受験した際、PCTの条文を探すのに手間取り、法文集を引くだけで思った以上に時間を使ってしまった経験があります。
そのため、翌年の試験に向けて、各法令が法文集のどのあたりにあり、どの程度のページ数を占めているのかをあらかじめ確認していました。実際の効果は気休め程度だったかもしれませんが、法文集全体の構成を把握しておくという意味では役に立ったと思います。
過年度の試験用法文集は中古市場などで入手できる場合もあり、実物を使って練習する受験生もいるようです。しかし、必ずしも実物を用意する必要はなく、大きさや収録内容、試験中の扱い方をあらかじめ知っておくだけでも、本番での戸惑いや不安を減らすことにつながると思います。
もちろん、論文式試験は時間がタイトな試験なので、なるべく法文集を何度も引かなくても答案を書けるように準備し、条文番号や条文の文言を最終確認するために活用するのがよいと思います。
口述式試験では、法文集を参照する前に、まずは自分の知識で回答し、正確な条文の文言を求められた場合や、確認が必要になった場合に法文集を利用するのが良いでしょう。答えに詰まって沈黙してしまうよりは、必要に応じて法文集を参照し、確認できたところから回答して試験官とのやり取りを続ける方がよいと思います。
結び
今回は、弁理士試験の法文集について、実物をもとにサイズ・重さ・収録内容などを見てきました。
A5サイズとはいえ、開けばA4サイズ相当となり、試験中は机上のスペースをかなり使います。また、約1kgという重さや、条約関係が全体の20%以上を占めることなど、改めて数値で見ると興味深い特徴も見えてきました。
この法文集の表紙の色遣いと重み、ページをめくる時の紙の感触は、今もリアルに記憶に残っています。筆者も、自分が受験した時の法文集は、宝物として保存しています。

図4 法文集イメージ
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