第18回 ワットの蒸気機関の改良― 独立復水器がもたらした劇的な効率改善

知財の歴史

はじめに

 前回は、ワットが蒸気機関の改良を達成するまでを見てきました。

 ワットが蒸気機関を改良したことは、よく知られています。では、いったい、ワットはどのように蒸気機関を改良したのでしょうか。今回はワットの蒸気機関の改良について、その仕組みと効果について見ていきます。

背景

 1712年頃に、炭鉱の排水問題に対処すべく、ニューコメンの蒸気機関によるポンプが発明されました。しかし、ニューコメンの蒸気機関には燃料効率が非常に悪いという欠点がありました。

 ニューコメンの蒸気機関は、シリンダー内の水蒸気を冷却する際に、シリンダー全体を冷却します。このため、シリンダーに水蒸気を発生させる際に、シリンダーごと再加熱しなければならず、多くのエネルギーが必要でした。

 この欠点の対処法として、ワットは1765年頃に、「独立復水器」のアイデアを思いつき、様々な困難を経て、1776年にボールトンの協力のもと、実用化に漕ぎつけました。

ワットの蒸気機関の原理

 ニューコメンの蒸気機関は、シリンダー内の水蒸気の過熱と冷却を繰り返して圧力を変化させることでポンプを動作させます。水蒸気の冷却により、シリンダー内の圧力が下がって真空となることによりピストンを動かす装置でした。

 水蒸気の冷却に際し冷水をシリンダーに投入しますが、水蒸気だけでなくシリンダーも冷却されてしまいます。このため、水蒸気を加熱する際に、シリンダーも再度加熱する必要がありました。

 このことは、シリンダーの冷却と再加熱に多大なエネルギーを要し、非常に燃料効率が悪いという欠点につながりました。以下に、ニューコメンの蒸気機関を示します。

図1 ニューコメンの蒸気機関

 ここで、ワットは、蒸気を冷却する「復水器」をシリンダーの外に設け、蒸気のみ冷却するという方法を思いつきました。これにより、シリンダーの温度を保ったまま蒸気を冷却・加熱できるため、効率が大幅に向上しました。数値的には、効率が4倍にもなったと言われています。

 具体的には、シリンダー内の水蒸気が過熱されて圧力が上昇すると、蒸気が復水器へと導かれ、蒸気は復水器で冷却されます。

 冷却された蒸気は復水器で凝結して水になり、復水器内の圧力が下がってほぼ真空状態になります。すると、シリンダーの圧力が下がり、その圧力差によってピストンが下がります。

 以下の図に、ワットの改良した蒸気機関の原理を示します。

図2 ワットの蒸気機関の原理

結び

 ワットは、シリンダー外に復水器を設けて、蒸気のみを冷却・再加熱をすることにより、ニューコメンの蒸気機関の効率を大幅に向上させました。

 一見、単純な仕掛けに見えますが、効率を4倍にするなどの大きな効果が得られました。一方、この改良の実用化に至るまでは、20年近い年月と多大な費用が掛かりました。このことが、ワットの特許戦略に影響していきます。

 なお、ワットはグラスゴー大学でニューコメンの蒸気機関の模型を修理している際に、この大きな熱損失に気づいたと言われています。

 次回は、ワットが自身の発明を守るために、どのように特許制度を利用したのかを見ていきます。

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