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中国がフィンテック特許で世界一に?知財の視点から見る「本当の狙い」とは

FinTech 知財あれこれ

※ この記事で扱うのは、暗号資産そのものではなく、金融サービスや決済インフラを支える技術としてのフィンテック特許です。

はじめに

 2026年7月7日火曜日の日本経済新聞朝刊に、「フィンテック特許、中国首位」という記事がありました。記事では、中国のフィンテック分野における特許出願数が、米国のフィンテック分野の特許出願数を抜いて世界首位になったと報じています。

 このことは、具体的に何を表しているのでしょうか? 特許出願件数については、以前、「中国が日本を抜いた!? ~出願件数による比較の意味を考察する~」というブログで取り上げましたが、今回も同じような意図で特許出願を大量にしているのでしょうか?

 今回は、フィンテック特許について、中国が大量に出願する意味を読み解いていきます。

フィンテックとは?

 フィンテック (FinTech) とは、「金融 (Finance)」と「技術 (Technology)」を組み合わせた造語で、情報技術を駆使することによって、金融サービスをより便利にする技術やサービスの総称を指します。

 例えば、スマートフォンのアプリを使って銀行の送金や、株の売買などを行えるようにすることが、フィンテックに該当します。つまり、情報社会の中の金融のインフラを構築する技術といったところでしょうか。

 今回のニュース記事は、そんなフィンテックにおける特許出願の件数について、中国が米国を抜いて世界首位になったことを報じています。このことは、中国が世界の金融インフラを支配することにつながるのでしょうか?

出願件数の増加が示す意味の違い

 先日のブログで取り上げた「中国のペロブスカイト太陽電池の特許出願件数が日本を追い抜いた」ということと、今回のニュースでの「中国がフィンテック特許出願件数で世界首位になった」ということは、どちらも中国の特許出願の件数が伸びていることを示します。

 このことは、一見「中国が数で押し切った」ように見えます。しかし、この2つは、知財を使って狙っているゴールが大きく異なります。

 ただし、特許出願件数が多いからといって、直ちに技術力や事業上の優位性があるとは限りません。特許は、権利化されて初めて排他的効力を持つものであり、出願件数だけでは、特許の質や実際の市場支配力までは分からないからです。

ペロブスカイト太陽電池の特許出願から見える狙い

 中国がペロブスカイト太陽電池の特許出願を大量に行う目的の一つは、「サプライチェーンの主導権を握ること」にあると考えられます。つまりペロブスカイト太陽電池やその部品などの周辺の装置や製造方法に関する技術を広く押さえようとしているのです。

 中国は、製品そのものだけでなく「安く、大量に作るための製造マシンのアイデア」や「長持ちさせるための加工方法」といった、量産に必要な周辺の特許を網羅的に押さえました。

 これにより、日本企業が「いざ工場を作って量産しよう!」と思った時には、どこを向いても中国の特許に引っかかって身動きが取れないという、「モノづくりの主導権を奪う知財戦略」だったのです。

フィンテック特許の出願から見える狙い

 今回のニュースのように、フィンテック特許を大量に出願したということは、先ほど述べたペロブスカイト太陽電池の場合と戦う次元が全く異なります。

 今回の出願トップに名を連ねているのは、中国の民間企業だけでなく、中国工商銀行など、国家の金融政策とも密接に関わる巨大金融機関です。ここでの中国の狙いは、製品の独占ではなく、「アメリカに依存しない、自前の経済圏(防壁)を作ること」です。

 現在の国際金融取引では、米ドル決済やSWIFTなどの既存の国際決済インフラが大きな役割を果たしています。そのため、米国や欧米諸国による金融制裁の影響は非常に大きく、中国にとっては、こうした既存インフラへの依存を下げることが重要な課題になっています

 そこで中国は、ブロックチェーンやデジタル通貨に関する特許を大量に押さえることで、「米ドルや既存の決済インフラへの依存を下げながら、スマホ一つで国境を越えて安全に取引できる、新しいお金の通り道」を自前で作ろうとしていると考えられます。

 つまり、フィンテックの特許は、単に金融サービスを便利にするためだけのものではありません。既存の国際決済インフラへの依存を下げ将来の金融ルール作りで主導権を握るための「知財の盾」としての意味も持っているのです。

まとめ

 2つのニュースをまとめると、中国の知財戦略は次のように整理できます。

 ペロブスカイト太陽電池の特許は、次世代の「製品」とそのサプライチェーンを押さえるための知財です。これに対し、フィンテックの特許は、未来の「お金の流れ」や「決済のルール」に関わる知財です。

 もちろん、特許出願件数だけで技術力や市場支配力を判断することはできません。しかし、中国が、将来重要になる市場を予測し、早い段階から関連技術を特許で囲い込もうとしていることは確かです。

 ビジネスにおいて、特許は単に「技術を守るお守り」ではありません。将来の市場で有利な位置を確保し、自分たちに有利なルールで戦うための経営戦略の一部でもあります。

 今回のフィンテック特許のニュースは、特許が技術だけでなく、金融・国家戦略・国際ルールとも深く関わる時代になっていることを示しているのです。

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