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JR東日本の新たな夜行特急「ルナ・アズール」に見る意匠登録の世界

知財あれこれ

はじめに

 2026年6月9日火曜日、JR東日本は、夜行運転に対応する特急列車ルナ・アズール」についてプレスリリースにて発表しました。(出典:JR東日本プレスリリース「夜行運転に対応する特急列車により新たな乗車体験を提案します」)

 ルナ・アズールは、現行の特急「ひたち」「ときわ」に使用しているE657系特急型車両を改造し、東北方面への夜行運行を想定した新たな特急列車です。

 この度、プレスリリースにて以下の内容が発表されました。

 (1) 列車の愛称を「ルナ・アズール」とする

 (2) 春から秋は、品川駅から青森駅 (日本海側・秋田・弘前経由)で週2往復、夜行で運行

 (3) 冬季は、品川駅から長野原草津口駅 (群馬県) を週6往復、昼行で運行

 (4) 客室のイメージ図や設備の内容

 また、ルナ・アズールのロゴマークも発表されており、商標登録出願中と出ていました。

 ここに、ルナ・アズールにも知的財産が関係していることになります。早速、J-PlatPat で「東日本旅客鉄道株式会社」と検索をしたところ、2026年6月9日現在、商標についてはまだ掲載されていませんでしたが、意匠については様々な形で登録を受けていたことが確認できました。

 今回は、ルナ・アズールがどんな意匠登録を受けていたのかを見ていきます。

部分意匠 (外装の模様の部分)

 まずは、外装の模様の部分を、「部分意匠」として登録しています。

 部分意匠とは、全体のデザインではなく、特徴的な「一部分」のデザインを保護する制度です。例えば、自動車のドアミラーや、化粧品のボトルの装飾部分などに意匠登録を受け、その部分を守ることができます。

 ルナ・アズールの車両についても、E657系という車両の外装を一新することから、その特徴的な外装の模様の部分について意匠登録を受けているのです。

 なお、部分意匠については、物品は全体と同じ「旅客車」となっています。つまり、「旅客車」について同じような模様を施すと、JR東日本の意匠権を侵害する可能性が生じます。

 E657系の車両自体は、すでに特急「ひたち」「ときわ」として使用されている車両です。そのため、今回の意匠登録では、車両全体そのものというよりも、ルナ・アズールとして新たに施された特徴的な外装の模様に着目し、部分意匠として保護を受けたものと考えられます。

内装の意匠 (客室の内装)

 車両の客室設備については、「内装の意匠」として保護を受けています。内装の意匠は、建物等の内部のインテリアの配置や、壁・床・天井などの装飾を組み合わせた空間全体で統一された美感を作り出すデザインを保護する制度です。

 インテリアデザインは、それ自体がブランド価値を高めるため、その模倣を防ぐ目的があります。

 内装の意匠は、令和元年(2019年)の意匠法改正により保護対象に加えられ、2020年4月1日から施行されました。今後も、鉄道車両だけでなく、店舗や船・飛行機などの輸送機関の内装の意匠登録が盛んになると考えられます。

関連意匠 (先頭車両:1号車と10号車)

 類似する複数の意匠を、バリエーションの意匠として意匠登録を受ける制度です。例えば、製品Aからマイナーチェンジした新製品Bを創作した場合、すでに製品Bに類似している製品Aが公になっているため、製品Bは意匠登録を受けられません。

 しかし、関連意匠制度を利用することによって、マイナーチェンジをした場合等、自分の創作した類似する意匠についてはバリエーションの意匠として意匠登録が受けられます。自動車の製品展開などが例となります。

 ルナ・アズールの場合は、先程の外装の部分意匠について、先頭の1号車と反対側の10号車について関連意匠登録を受けています。同じような外装でも、車両の構造や位置がことなるため、同じ意匠権では十分保護を受けられない可能性もあります。このため、関連意匠登録を受けたと考えられます。

他の物品への展開 (電車おもちゃ)

 ルナ・アズールの意匠については、「電車おもちゃ」としても意匠登録を受けています。実際の商品展開の有無は今後の発表を待つ必要がありますが、鉄道車両のデザインは、実物の車両だけでなく、玩具・模型・グッズなどの展開とも関係し得ることが分かります。

結び

 JR東日本が発表した新たな特急列車「ルナ・アズール」を見るだけでも、部分意匠、内装の意匠、関連意匠、さらに玩具への展開など、さまざまな意匠制度が利用されていることが分かります。

 また、鉄道に関する知的財産は、ルナ・アズールに限られません。JR東日本は、E131系電車や新幹線車両などについても意匠登録を受けており、列車名やロゴマークについては商標も関係します

 今回の事例は、意匠法を学ぶ人にとっても、部分意匠、関連意匠、内装の意匠、物品の違いなどを一度に確認できる良いケーススタディといえます。

 普段何気なく見ている電車や列車にも、実は多くの知的財産が隠れています。鉄道をきっかけに意匠や商標を見てみると、知的財産がぐっと身近に感じられるのではないでしょうか。

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