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中国が日本を抜いた!? ~出願件数による比較の意味を考察する~

知財あれこれ

※ アイキャッチ画像では、特許出願競争をイメージとして表現しています。

はじめに

 2026年5月5日の日本経済新聞の朝刊に、「ペロブスカイト太陽電池の特許出願、中国が日本を逆転」という記事がありました。ペロブスカイト太陽電池は2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授の研究グループが発明・発表した日本発の技術です。

 しかし、そのペロブスカイト太陽電池について、「中国の特許出願件数が日本を追い抜いた」と報じられました。また、近年はペロブスカイト太陽電池だけでなく、様々な分野で中国の特許出願件数が世界一になっているという報道をよく見かけます。

 ところで、なぜ、特許出願の件数で評価するのでしょうか? 特許を出願しても、審査で拒絶される等で特許を取ることができない場合もあります。

 私自身も、「特許出願件数が多い」と聞いたとき、最初は「出願しただけで、まだ特許になったわけではないのではないか」と疑問に感じました。しかし、調べてみると、出願件数は単なる数字ではなく、その分野にどれだけ研究開発や事業化の力が注がれているかを示す重要な指標でもあることが分かります。

 今回は、特許出願件数という数字が、技術開発や事業化の動きをどのように表しているのかを見ていきます。

ペロブスカイト太陽電池とは

 ペロブスカイト太陽電池は、上述の通り、2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明した太陽電池で、従来のシリコン型とは異なり、薄く、軽く、曲げられるため、壁面や耐荷重の小さい屋根にも設置可能となるなど、太陽電池の設置場所の制約を大幅に改善することが期待されます。

日本の特許取得のプロセス

 日本で特許を取得する場合、基本的に、次のステップで進むこととなります。

(1) 発明完成

(2) 特許庁に出願(特許出願)

(3) 出願公開(特許出願から原則1年6カ月後)

(4) 特許庁への審査の請求(特許出願から3年以内)

(5) 特許庁での審査

(6) 特許出願が拒絶となる理由がなければ、特許を受けられる旨の査定がなされる(特許査定)

(7) 登録料の納付をもって、特許を取得

 以上のように、特許出願をしても、直ちに特許取得することはできません。

なぜ、特許出願の件数で評価するのか

 特許出願件数での比較は、単なる技術力を誇示するだけでなく、「将来の市場でどれだけ自由に商売ができるか」という極めて実利的な意味があります。

 特許出願の件数に注目が集まる理由は、主に以下の3点に集約されます。

(1) ビジネスの自由度を左右する

 特許を大量に持っていると、他社との交渉(クロスライセンスなど)を有利に進められます。

 もし、日本が基本技術を持っていても、中国企業が「量産に必要な細かい周辺技術」を大量に特許化していれば、日本企業はそれらを避けられず、製品を作れなくなる恐れがあります。

 また、お互いの特許を使い合う交渉の際、持ち駒(特許件数)が多いほど、ライセンス料について有利になるようにする交渉がしやすくなります

(2) 「開発の勢い」と「投資意欲」の可視化

 特許出願は、企業や国がどれだけの人材と資金をその分野に投入しているかを示す指標になります。

 中国の最近の出願は、製造装置や量産プロセスに関するものが多く、基礎研究から「ビジネスとして大量生産する」段階へ移行していることを示唆しています。

 本命の技術(中心技術)だけでなく、その周辺の改良技術を網羅的に出願することで、他国が参入しにくい「特許の壁」を築く狙いがあります。

(3) 件数=質、ではない

 件数だけでは測れない「技術の深さ」もあります。

 具体的には、中国の出願には自国内向けのものも多い一方で、世界2か国以上に出願された「国際展開発明件数(IPF)」を見ると、日本が依然として高い存在感を保っているという分析もあります。

 また、日本は初期の重要特許を押さえており、依然として質の面では強力な特許の束を維持しています。

まとめ

 特許出願件数の比較は、「量産化・事業化へ向けて出願を急速に積み上げる中国」と、「基礎技術や国際展開発明で強みを持つ日本」という、産業競争の構図を映し出しているともいえます。

 この「技術で勝ってビジネスで負ける」という懸念を払拭するために、日本企業が今後どのように量産化のスピードを上げていくかに関心が集まっています。

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