【意匠】電車の意匠の類似関係とバリエーションの意匠登録 ― E131系200番台の意匠登録を考察する

E131-200 身近な意匠 (デザイン)

はじめに

 先の記事で、「JR東日本E131系電車に見る意匠の類似関係」と題して、E131系電車の路線ごとのバリエーションについて意匠登録を受けている事例を取り上げました。

 2026年9月14日に、E131系200番台というE131系の長野・山梨エリア (中央本線・篠ノ井線など) のバージョンが、意匠登録を受け、同年9月25日に公報が発行されました。

E131-200

図1 E131系200番台 (長野・山梨エリア用)

 E131系200番台は、2026年10月1日から長野・山梨エリアで営業運転を開始しています。

 E131系200番台は、E131系の6番目のバリエーションとして意匠登録を受けていましたが、その過程が関連意匠制度や類似関係など興味深いものとなっています。

 今回は、このE131系200番台の意匠登録の経緯について、他のE131系との類似関係や関連意匠制度の仕組みを交えてみていきます。

E131系の意匠登録出願

 E131系は、房総エリアの基本番台 (0番台)、相模線用の500番台、宇都宮線・日光線用の600番台、鶴見線用の1000番台、仙石線用の800番台、そして長野・山梨エリアの200番台と、6種類のバージョンがあります。

 それぞれについて意匠登録出願がされ、意匠登録を受けています。ここで、宇都宮線・日光線用の600番台については房総エリアの基本番台を本意匠として、関連意匠制度を利用しています。これにより、600番台は基本番台と類似していても意匠登録を受けることができました。

図2 出願当初のE131系の類似関係

 また、鶴見線用の1000番台は、審査の過程で「基本番台と類似している」として意匠法3条1項3号を理由とする拒絶理由通知を受けています。そこで、1000番台を基本番台の関連意匠とすることで、拒絶理由を解消し、意匠登録を受けることができています。

図3 鶴見線用1000番台を関連意匠に補正

 相模線用の500番台と仙石線用の800番台については、それぞれ独立した意匠として意匠登録を受けています。

 では、200番台についてはどうなのでしょうか。

E131系200番台の審査経過

 E131系200番台についても2025年12月8日に意匠登録出願がされましたが、「E131系500番台の意匠と類似している。E131系800番台の意匠とも類似している」ため、3条1項3号 (公知意匠と類似) の拒絶理由通知を受けました。

図4 E131系500番台 (相模線) とE131系200番台 (長野・山梨エリア) とE131系800番台 (仙石線)

 今回の場合は、独立した2つの意匠 (E131系500番台とE131系800番台) にそれぞれ類似していることが問題となります。一方の意匠を本意匠とする関連意匠に補正しても、もう一方の意匠との類似関係が残るため、それだけでは拒絶理由を解消することができません。

 具体的には、仮にE131系500番台を本意匠としてE131系200番台を関連意匠とする補正をしても、まだ別の独立した意匠であるE131系800番台との関係で拒絶されてしまいます。

図5 審査時点での類似関係

 関連意匠制度は、自己が出願・登録したすべての意匠との類似関係について、無条件に登録を認める制度ではありません。

 もっとも、仮にE131系500番台とE131系800番台が同じ基礎意匠に係る関連意匠であった場合には、E131系200番台もその意匠群の関連意匠とすることで、双方に類似していても、意匠法10条7項・8項により、これらの意匠との関係で登録を受けられる余地があったと考えられます。

図6 共通する基礎意匠があった場合の類似関係

E131系200番台の対応策

 そこで、E131系200番台については、以下の対応を取っています。

 まず、E131系500番台を本意匠とし、E131系200番台を関連意匠とする補正を行っています。

図7 E131系500番台 (本意匠) とE131系200番台 (関連意匠)

 E131系800番台との関係では、意見書で「類似していない」旨を主張しています。意見書によると、E131系200番台は「前面中央の貫通扉、その下方の無地部分、連結器が上下方向に連続して視認され、前面中央部から前面下部へ続く縦方向の構成が表れている」とし、E131系800番台は、「貫通扉がなく、中央の矩形 (四角形) 状部分は比較的高い位置で終了し、その下方には、中央部分を含めてドット模様が左右方向に連続する横長の外装面が形成されている」としています。このため、両意匠は類似していないとしています。

 つまり、E131系200番台は「貫通扉を中心とした縦方向に流れるデザイン」、E131系800番台は「貫通扉がなく、ドット模様が左右に続いている横方向に流れるデザイン」であるため、類似していないと主張しています。

図8 E131系200番台とE131系800番台 (非類似)

 こうして、E131系200番台は、E131系500番台の関連意匠とする補正を行うとともに、E131系800番台とは類似していない旨を意見書で主張しました。その結果、拒絶理由が解消され、意匠登録を受けることができました。

図9 E131系200番台の意匠登録時の類似関係

結び

 今回のE131系の事例では、同じ系列の車両でも類似・非類似の判断が分かれるとともに、自己が先に公開した意匠との類似関係によって登録が妨げられる場合がある、という事例でした。

 関連意匠制度は、大元の基礎意匠を起点として関連意匠の関係が連鎖的に続く場合に、一定の要件のもと、相互に類似する意匠についても登録を認める制度です (意匠法10条1項・4項・7項・8項)。これは、徐々にマイナーチェンジして展開されていく意匠群を保護する制度でもあります。

 JR東日本は、知的財産権について力を入れていく旨を発表しています (JR東日本サイト「知的財産活動の具体的な取組み」)。ルナ・アズールや新幹線車両などについても意匠登録や商標登録を多く出願しています。

 同じ系列の車両であっても、デザインの違いや出願の仕方によって、意匠登録の可否が変わることがわかります。鉄道車両のように、基本的なデザインを継承しながら路線ごとにバリエーションを展開する製品では、関連意匠制度の活用が重要になると考えられます。

 今後も車両のデザインと意匠権との関係が注目されます。

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