はじめに
「意匠」と聞くと、自動車、スマートフォン、文房具、家具などの工業製品を思い浮かべる人が多いと思われます。
しかし、意匠登録の対象は、いわゆる工業製品だけに限られません。ケーキ、アイスクリーム、寿司のような食品についても、一定の条件を満たせば意匠登録を受られる可能性があります。
近年は、料理を食べる前に写真を撮り、SNSに投稿することも珍しくありません。食品の「見た目」は、単なる飾りではなく、商品の魅力やブランドイメージを左右する大切な要素になっています。
なぜ食品も意匠登録を受けられ得るのか?
意匠法では、「意匠」を保護の対象としています。意匠登録を受けて意匠権を取ると、意匠権者は自分の創作した意匠や、これに類似する意匠について独占的に製造や販売などをすることができるようになります。これは、意匠法の第23条に規定されています。
では、「意匠」とは、どういうものなのでしょうか? 意匠法の第2条では、「意匠とは、物品等の形状等であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう」と定義されています。言い換えると、「物品の美的な外観」ということになります。
ここで、「物品」とはどういうものなのでしょうか? こちらは工業所有権法逐条解説 (いわゆる青本) では、「有体物である動産」とされています。なお、現在の意匠法では、動産でなくても建築物ならば意匠登録の対象となっています。
すなわち、形があって、お店で買って持ち運びできるものが「物品」ということになります。
更に、意匠登録を受けられる対象は、意匠法3条1項で「工業上利用できる意匠」とされています。ここで、「工業上利用できる」とは、工業的手段で量産できるものを指します。
つまり、「意匠」の中でも、一品物の様な作品は意匠登録を受けられませんが、同じものを量産できるものであれば、意匠登録を受けられます。
つまり、ケーキなどの食べ物も、形があってお店で買って持ち運びができるから「物品」になりますし、目に見えて美感が感じられれば「意匠」になります。更に、同じものを量産できれば、意匠登録を受けられる可能性があるということになります。
アイスクリームについても、冷えた状態で保存できれば形状を保つことができるので、「意匠」に該当し、量産できれば意匠登録を受けることができます。
ただし、食品であれば何でも意匠登録できるわけではありません。料理や食品として当然に採られる形、ありふれた盛り付け、機能上どうしても必要になる形だけでは、登録が難しい場合があります。
意匠登録で守りやすいのは、単なる料理の種類ではなく、外観上の具体的な創作が表れている部分です。
意匠登録の事例
実際に、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」で意匠を検索してみると、食品に関する意匠登録の例を見ることができます。
たとえば、「ケーキ」「アイスクリーム」「寿司」「菓子」などのキーワードで検索すると、食品そのものの形状や、見た目に特徴のある商品について、意匠登録がされている例が見つかります。
ここで注目したいのは、保護されているのが「味」や「レシピ」そのものではなく、商品の外観、すなわち形状・模様・色彩などのデザインであるという点です。
普段は何気なく見ているスイーツや料理も、知的財産の目で見てみると、「見た目の工夫」が保護の対象になり得ることが分かります。
結び
食品の価値は、味だけで決まるものではありません。見た目の美しさ、かわいらしさ、驚き、食べる前の期待感も、商品の大切な魅力です。
近年では、SNS映えや、和食ブームによる海外展開が注目される時代となり、食品の外観自体が重要な知的財産になる可能性があります。
特に、スイーツや和食のように見た目が重視される食品では、デザインそのものがブランドの一部になることがあります。和食ブームや食品ビジネスの海外展開が進む中で、食品の外観をどのように守るかは、今後ますます重要になっていくかもしれません。
ケーキ、アイスクリーム、寿司、和菓子、店舗の外観や内装などを組み合わせて考えると、食品ビジネスにおける意匠制度の活用余地は、今後さらに広がっていくのではないでしょうか。
ケーキやアイスクリーム、寿司のような身近な食品も、知財の視点から見ると、ブランドを支える大切なデザイン資産になり得るのです。
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