ルナ・アズールは貨物輸送をするのか? ― 商標登録出願の指定商品・指定役務を見る

E657系 商標とブランドの話

はじめに

 JR東日本が導入する夜行運転に対応する特急列車「ルナ・アズール」について、「ルナ・アズール」の名称と、ロゴマークがそれぞれ商標登録出願 (以下、出願) されています (商願2026-064135、商願2026-064136)。

※ 参考記事:「ルナ・アズール」が商標登録出願をした理由を考察する

※ 参考記事:「ルナ・アズール」はなぜ文字商標とロゴ商標を別々に出願したのか?

※ 参考記事:新たな夜行特急「ルナ・アズール」に見る意匠登録の世界

 どちらの出願についても、指定商品・指定役務は同様となっています。しかし、指定商品・指定役務について多くの商品・役務が指定されています。

 中には、「貨物の梱包」「貨物の積卸し」といった貨物の扱いに関するものも役務として指定されています。

 今回は、「ルナ・アズール」の出願において、どのような商品・役務が指定されているのかを見ていきます。

商標登録出願

 商標登録を受けるには、特許庁に出願をします。出願方法については、商標法第5条に規定されています。

 商標法第5条を見ると、同条第1項に、「商標登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に必要な書面を添付して特許庁長官に提出しなければならない」とあります。その各号には、「商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所」「商標登録を受けようとする商標」「指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分」とあります。

 すなわち、願書には「商標」「指定商品・指定役務」「区分」を記載することになります。

商標について

 まず、願書に商標登録を受けたい「商標」を記載します。「ルナ・アズール」では、文字での「ルナ・アズール」(商願2026-064135)と、ロゴマーク(商願2026-064136) がそれぞれ商標登録出願されています。

 文字商標の場合は、「商標」として「ルナ・アズール」の名称が記載されています。ロゴマークの商標の場合は、「商標」としてルナ・アズールのロゴマークが描かれています。

 なお、1つの出願には、1つの商標のみ記載出来ます。これは商標法第6条第1項に記載されており、いわゆる「一商標一出願」と呼ばれています。

指定商品・指定役務について

 願書に、その商標を使用する商品・役務を指定します。ルナ・アズールの場合は、文字商標・ロゴマーク商標のどちらも同じ商品・役務を指定しています。ルナ・アズールについては、多くの商品・役務が指定されています。具体的にどのような商品・役務が指定されているかは、次章で取り上げます。

区分について

 願書に、指定商品・指定役務とともに区分を記載します。区分は、指定する商品・役務によって政令で決められています。1つの出願に複数の区分を含めることができます。これを、「一出願多区分制」と呼びます。

 商標登録の出願料や登録料は、この区分の数によって決まります。区分が多いほど、出願料・登録料が高くなります。

 区分内であれば、複数の商品・役務を指定することができます。ルナ・アズールの出願の場合、第35類、第39類、第43類の3つの区分が含まれています。

実際にどのような商品・役務が指定されているか

 J-PlatPatでルナ・アズールの商標登録出願を見ると、以下のように区分と商品・役務が指定されています。

第35類

  1. 広告業
  2. 交通広告
  3. 屋外広告物による広告
  4. 広告宣伝物の企画及び制作
  5. 見本市の企画又は運営
  6. 商業または広告のための展示会の企画・運営
  7. トレーディングスタンプの発行
  8. 経営の診断又は経営に関する助言
  9. 商品の販売に関する情報の提供
  10. 事業の管理
  11. 市場調査又は分析
  12. コンピュータデータベースへの情報編集
  13. 広告用具の貸与
  14. 消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供
  15. 織物及び寝具類の小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供
  16. クッションおよび枕の小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供
  17. 被服の小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供
  18. 履物の小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供
  19. かばん類及び袋物の小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供
  20. 身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  21. 飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  22. 酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  23. 野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  24. 菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  25. 牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  26. 清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  27. 茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  28. 加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  29. 家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  30. 電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  31. 手動利器・手動工具・金具及びキーホルダーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  32. 台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  33. 化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  34. 印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  35. 紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  36. 運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  37. おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  38. 囲碁用具・将棋用具・チェス用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  39. 楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  40. 時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  41. 建築材料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  42. 絵画の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

第39類

  1. 鉄道による輸送
  2. 鉄道による輸送に関する情報の提供
  3. 車両による輸送
  4. 車両による輸送に関する情報の提供
  5. 貨物のこん包
  6. 貨物の輸送の媒介(「船舶による物品の輸送の媒介」を除く。)
  7. 貨物の積卸し
  8. 寄託を受けた物品の倉庫における保管
  9. 他人の携帯品の一時預かり
  10. 手荷物の一時預かり
  11. 荷物の一時預かり
  12. 配達物の一時預かり
  13. 自動車の貸与
  14. 自転車の貸与
  15. 車椅子の貸与
  16. 企画旅行の実施
  17. 旅行者の案内
  18. 企画旅行の実施に関する情報の提供
  19. 旅行者の案内に関する情報の提供
  20. 旅行の予約
  21. 旅行者の添乗又は案内
  22. 旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ
  23. 旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎに関する情報の提供
  24. 列車又はバスの座席券の予約及び発券の代理・媒介又は取次ぎ
  25. 列車又はバスの座席券の予約及び発券の代理・媒介又は取次ぎに関する情報の提供
  26. オンライン申請による乗客の輸送の手配,観光ツアーのための輸送

第43類

  1. 宿泊施設の提供
  2. 宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ
  3. 飲食物の提供
  4. 会議室の貸与
  5. 展示施設の貸与
  6. 布団の貸与
  7. まくらの貸与
  8. 毛布の貸与
  9. おしぼりの貸与
  10. タオルの貸与

 以上のように、全部で3区分・78の商品・役務が指定されていることが分かります。

 第35類では、広告やマーケティングに関する役務のほか、衣類、飲食料品、文房具、玩具など、ルナ・アズール関連グッズとして展開される可能性のある様々な商品についての小売等役務が指定されています。

 第39類では、主に旅客輸送、貨物の取扱い、手荷物の取扱い、レンタカー、旅行業が含まれていることが分かります。ここでは、列車による旅客輸送だけでなく、様々な旅行商品や旅行に付帯するサービスも想定していると考えられます。

 また、「貨物のこん包」「貨物の積卸し」など、貨物の取扱いに関する役務も指定されています。これだけで実際にルナ・アズールを使った貨物輸送が計画されているとはいえませんが、新幹線を利用した荷物輸送サービス「はこビュン」や、かつてのブルートレイン便のようなサービスを連想させる興味深い指定といえます。

 第43類では、主に宿泊業に関するものが含まれていることが解ります。宿泊関係の他、会議室の貸与、展示施設の貸与なども含まれていることから、何らかのルナ・アズールに関するツアー企画や展示会などが想定されるのかと考えられます。

 このように幅広い商品・役務を指定しておくことで、将来想定されるルナ・アズール関連の商品・サービスについて、商標による保護を受けられる範囲を広く確保しようとしていることがうかがえます。また、第三者が同一又は類似する商標を、これらと同一又は類似する商品・役務について使用することへの対策という意味もあると考えられます。

結び

 ルナ・アズールについては、鉄道による輸送だけでなく、関連グッズの小売等役務や旅行サービス、荷物や貨物の取扱いに関する役務など、幅広い商品・サービスを想定した指定が行われていることが分かります。

 著名なキャラクターやブランドの商標でも、多様な商品・役務が指定されている例が見受けられます。

 商標は名前だけを見るのではなく、指定商品・指定役務を見ることで、そのブランドをどのような事業領域で使おうとしているのかが少し見えてきます。

 商標登録出願における指定商品・指定役務から、どのような商品やサービスが展開されるのかを想像してみるのも一興かと思いました。

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