はじめに
現地時間の2026年6月11日、日本時間では6月12日に、サッカーのFIFAワールドカップ2026が開幕しました。
テレビでW杯の中継を見ていると、スタジアムの観客席下のフェンスに、「マクドナルド」や「VISA」などのスポンサー企業のロゴマークが電光表示されているのを目にします。
これは、マクドナルドやVISAといった企業の商標の使用に該当するのでしょうか?
今回は、スタジアムの電光表示板に表示されるスポンサー企業のロゴマークなどが、日本の商標法上ではどう扱われるのかを考察してみます。
商標の使用とは?
商標は、企業や商品・サービスのブランドを表します。商標は「無言のセールスマン」とも呼ばれるように、商標を見て「どこの誰のモノか」「企業・商品・サービスが信用できるか」が一目でわかるような印 (標識) の役割を果たしています。
つまり、商標を使用して表示することによって、一般の需要者 (お客さん) にアピールをしつつ安心感を与える役割を持っています。そして、商標を使用することによって、商品・サービスの信用も蓄えられて、ブランドの価値も上がってくることになります。
商標の使用については、日本の商標法では、商標法第2条3項に規定されています。
「この法律で標章について『使用』とは、次に掲げる行為をいう。」
ここで、「この法律」とは商標法のことを指し、「次に掲げる行為」として第2条3項1号から10号が列挙されています。
スタジアムの電子看板は「広告的使用」にあたるのか?
結論からいえば、日本向けのテレビ中継やインターネット配信において、スポンサー企業のロゴマークが広告として表示される場合には、日本の商標法上も「商標の使用」と評価され得ます。
特に問題となるのは、商標法2条3項8号のいわゆる広告的使用です。商標法2条3項8号は、以下のように規定されています。
「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」
スタジアムの電光表示板にロゴマークを表示することは、「情報に商標を付して電磁的方法により提供する行為」、すなわち「電光表示板に表示される情報に商標を映して、インターネットやTVなどで配信・放映によって視聴者に届ける行為」に該当します。このため、TVで中継されるスタジアムの電光表示板にロゴマークを表示することは、商標の使用といえます。
海外のスポーツ中継でも、日本の商標法の規定が適用されるのか?
以上のように、W杯のスタジアムに「マクドナルド」などの企業のロゴマークが電光表示されることは、商標法上の商標の使用に該当することがわかりました。
ただし、ここで注意が必要です。海外のスタジアムにロゴを表示する行為そのものは、開催国で行われている行為です。日本の商標法には属地主義の考え方があるため、外国で行われた表示行為に日本の商標法が当然に適用されるわけではありません。
つまり、単に「海外のスタジアムにロゴが表示された」というだけで、直ちに日本の商標法が適用されるわけではありません。
その映像が日本向けの中継・配信として提供され、日本国内の視聴者に広告として届く場合には、日本国内における広告的使用として評価される余地があります。
なお、W杯に広告を出すような「マクドナルド」や「VISA」などのスポンサーは、世界的な大企業であり、世界中で商標権を持っています。
結び
4年に1回開催のワールドカップ。世界的なスポーツ中継にも、商標の使用という観点からみると、知財を学ぶネタを見つけることができます。このように、身の回りの何気ない場所にも、知財の種はたくさんあるのです。
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