はじめに
2009年5月21日に裁判員制度がスタートしました。裁判員制度は、国民が裁判員として特定の刑事裁判に参加する制度です。
ここで、弁理士は裁判員法第15条第1項第7号により、裁判員の職務に就くことができないと規定されています。つまり、弁理士は裁判員になることができないということになります。
今回は、裁判員制度と弁理士との関係について見ていきます。
裁判員制度とは
裁判員制度は、国民が裁判員として特定の刑事裁判に参加し、裁判官と一緒に有罪・無罪を判断し、有罪の場合にどのような刑にするのかを決める制度です。
裁判員制度の趣旨は、国民の視点や感覚を刑事裁判に反映させ、裁判を身近でわかりやすいものにしつつ、司法に対する国民の理解と信頼を深めることです。国民を参加させることで、社会の一般的な常識や感覚を評決に取り入れることや、多角的な視点での証拠評価を行うことが期待されます。
裁判員制度が対象とする刑事事件は、殺人、強盗致死傷、傷害致死、危険運転致死傷、現住建造物等放火などの重大な刑事事件です。
裁判員裁判は、原則として裁判員6名と裁判官3名が共同で審理します。被告人が有罪か無罪か、有罪の場合の刑罰を裁判官と対等な権限で決定します。法律の解釈などは裁判官が担います。
裁判員には、18歳以上の衆議院議員選挙有権者の中から、くじ引きにより無作為に選出されます。ただし、学生や70歳以上の者などについては、裁判員法第16条により、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができます。
裁判員の選任等については裁判員法第13条から第40条に規定されています。
ここで、裁判員法第15条第1項各号には就職禁止事由として、裁判員の職に就くことができない者が規定されています。この裁判員法第15条第1項第7号に弁理士が規定されています。
裁判員法第15条第1項
裁判員法第15条は就職禁止事由を規定しており、同条第1項各号には、職業や立場などを理由に裁判員の職務に就くことができない者が列挙されています。以下に、該当条文を抜粋引用します。
第15条 次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員の職務に就くことができない。
四 裁判官及び裁判官であった者
五 検察官及び検察官であった者
六 弁護士(外国法事務弁護士を含む。以下この項において同じ。)及び弁護士であった者
七 弁理士
八 司法書士
九 公証人
※ 法律全文は、e-Govの法令検索を参照されるとよいでしょう。
第15条第1項全体を見ると、主に立法・行政・司法に携わる者、地方自治体の首長、法律の専門家、裁判所などの特定組織に従事する公務員が挙げられています。これには、刑事裁判への影響や不公平感を与えかねない法律のプロ・捜査関係者や、国家や自治体の運営においてその場を離れることが困難な行政機関の幹部職員・自衛官が該当します。
裁判員法第15条第1項第7号には、弁理士も規定されています。弁理士が弁護士、司法書士、公証人などとともに裁判員の就職禁止事由に挙げられていることは、弁理士が知的財産権の分野における法律の専門家として位置づけられていることを示すものとも考えられます。
裁判員制度では、法律の専門家ではない一般の国民の視点や感覚を刑事裁判に反映させることが重視されています。この制度趣旨との関係からも、弁理士が就職禁止の対象となっていることは興味深いところです。
なお、裁判員法第15条第1項第7号には「弁理士」と規定されています。一方、同項第4号から第6号では、裁判官、検察官、弁護士について、それぞれ過去にその職にあった者も対象としています。これに対し、第7号には「弁理士であった者」という規定はありません。
このため、過去に弁理士であっても、現在は弁理士登録を受けていない者については、第7号の就職禁止事由には該当しないと考えられます。ただし、他の欠格事由や就職禁止事由などに該当しないことが前提となります。
結び
裁判員制度は、国民の視点や感覚を刑事裁判に反映させることを目的とした制度です。その一方で、弁理士は法律の規定によって裁判員の職務に就くことができません。
弁理士は、主に特許、実用新案、意匠、商標などの知的財産を取り扱う専門家です。刑事裁判に直接関与する機会は多くありませんが、裁判員法では弁護士や司法書士などと並んで就職禁止の対象とされています。
普段、知的財産に関する法律を取り扱っている筆者にとっても、弁理士が裁判員になれないというのは意外な発見でした。
このように、知的財産とは直接関係のない法律にも、弁理士に関する規定が存在していることは興味深いところです。
参考資料
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